リンパ浮腫と私

〜あの日の私は悲劇のヒロインだった〜

17歳で突然右脚がパンパンに腫れ、靴も履けなくなった。
原因は不明。
お医者さんには「治りません。一生付き合ってください」と言われた。
太く腫れ上がっていく脚が醜くて嫌いで、自分の脚を隠す癖ができた。
神様は意地悪で、私は悲劇のヒロインだと思っていた。
でも私は今、ここで笑っている。
この太い完璧じゃない病気の脚が大好きになった。

リンパ浮腫とは



ンパ浮腫とは、何らかの原因(乳がんや子宮がんの手術など)で本来心臓に戻るはずのリンパ液の流れが悪くなり、手や足に水が溜まって起こる慢性のむくみです。
一旦発症して、腫れきってしまうと完治する事は難しく、一生付き合わないといけない病気です。

 症状はむくみだけでなく、重苦しさや疲れやすさ、動きにくさ、時にぴりぴりした痛みや皮膚が伸びるような痛みを感じます。
私の場合右足の付け根から足先までがむくみ、朝からディズニーランドを一日歩いた帰りのような重だるさがあります。重力がかかる限り、右足はパンパンに腫れていきます。



続発性リンパ浮腫と原発性リンパ浮腫

 リンパ浮腫には大きく分けて原因のはっきりしている続発性と、原因不明の原発性があります。続発生は手術により、リンパ節を切除したことでリンパ液を回収する力が弱まって、発症しますがリンパ節を切除しても発症しない人もいます。リンパは生まれつき持っている能力の幅が人それぞれ違うそうです。そのため、もともとパワーのあるリンパを持っている人は手術をしても発病しないのです。

 私は原因不明の原発性です。高校3年間はとても厳しい部活に入り、朝から夜まで新体操をしていました。15歳で虫垂炎の手術したり、16歳で右足内転筋の肉離れをしたり、過度な体重制限で拒食症も発症していました。めまぐるしい体の変化で、もともとリンパ管などのパワーが弱かったため、リンパのオーバーワークになりリンパ浮腫を発病したのではないかというのが最近お世話になったドクターの診断でした。

 リンパ管やリンパ節の能力は数値などではわかりません。だからこそ誰がいつ発症するかもわかりません。

 また、リンパ浮腫でなくてもむくみを経験する人はほとんどではないでしょうか?
 

りっぱなし、立ちっぱなしで、夕方には足がパンパン。
お酒を飲んだ次の日は、顔がパンパン。
捻挫して、その周囲がパンパン。
妊娠して、足がパンパン。
高齢者や術後など寝たきりで、手足がパンパン。
など、むくみはいつでも私たちの体を変化させます。

私の右足はそれが病的にパンパンの状態で元には戻りません。



日常生活への影響

リンパ浮腫は、心臓に戻るはずの組織液が正常に循環できず、そこに溜まっているので、免疫力が低下し、過度の疲労やストレスなでで感染を起こしやすくなります。また皮膚は傷つきやすく治りにくい状態になっているので、傷や仮装を避けることも重要です。


私はシンガポールに旅行で行った時に、好奇心で海に素足で入りました。
普段は素足で過ごすことはなく、24時間弾性ストッキングもしくはバンテージという包帯を巻いて足を圧迫しています。
しかし旅行となれば気分もルンルン、ダメだと言われても入るのが20歳。
帰国後、「蜂窩織炎」という感染症を発症し、一週間の入院が待ち構えていました。
このように海に入るということだけでも感染症を繰り返してしまうのがこの病気の怖いところです。

この病気で私の生活は狭まりました。
素足になれないから、サンダルも履けない、プールも気をつけないといけない、蚊にさされないようにキャンプなどは行かない(行っても家族に厳重に守られる)飛行機は気圧でむくみがひどくなるからバンテージぐるぐる巻き、大好きな新体操ももちろん素足でレオタードを着て、関節が普通じゃない動きをするから怪我しやすく危険。


お医者さんに言われたのは

「新体操続けたら、悪化して歩けなくなる。」
「寝たきりが一番。」

という言葉。
そんな言葉を17歳の私に言うんです。

それでもって
「一生治りません、上手に付き合って下さい。」

で締めくくられます。

10代でオシャレしたり、スポーツしたり、海や川、プールに入ったり、
そんな当たり前だと思っていた事を制限されたんです。

 



悲劇のヒロインから人生の主人公へ

私は悲劇のヒロインでした。

「なんで私が?」

こんな特別な右足になって、周りの人も知らない病気になって、
悲劇のヒロインだったんです。

でも今日まで出逢った人や物、場所、経験が
ある事を教えてくれました。

悲劇のヒロイン → 人生の主人公
人と違う → スペシャル

「左右の足の太さが違うだけで、
少しみんなと同じ生活ができないだけで、
私はスペシャルなんだ」

「だったらとことん人と違う道を行けば良い」

「悲劇のヒロインはヒロインになれるだけの素質があるんだ」

「神様に大抜擢されたんだ」 と。



まるでおとぎ話のように、17歳で魔女に右足を太くなる呪いをかけられました。
でも、その右足がこの物語のはじまりです。



いだと思っていた右足が
私を鍼灸マッサージ師として
今ここに生かしてくれています。
また魔女がきて
「あなたは頑張ったから、もとの足に戻してあげよう」
と呪いを解きにきたとしても
私は「いいえ、この足のままでいいわ。この右足をプレゼントしてくれてありがとう。」
と言うでしょう。
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